皆さんこんにちは。今年は、日本でも数多くのコンシューマ向けのノーコードアプリケーションが生まれ、盛り上がりを見せているノーコード業界ですが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の機運の高まりと共に、エンタープライズ向けのノーコードツールにも大きな注目が集まっていることをご存知でしょうか?
ITの活用の活用を通じて、ビジネスモデルや組織を改革するというDXの概念とその重要性は広く社会で認知されるようになったものの、実際は、「IT人材不足」や「老朽化した基幹システム」、「サイロ化されたシステム」などが障壁となり、DXへの取り組みが思うように進んでいないという企業も多くあります。
そのため、非エンジニアでも扱うことができ、高速かつ低コストでのシステム開発を可能とするノーコード開発は、DXの観点からもその有用性が注目されるようになったのです。そこで今回は、2014年よりエンタープライズ向けのノーコードアプリケーション開発ツールForguncyの開発を手掛けてきたグレープシティ株式会社のForguncyプロダクトマネージャー大島治彦さんに、Forguncyが提供するソリューションやDXの手段としてのノーコード開発について語って頂きました。
2004年グレープシティ入社。入力コンポーネント「InputMan」シリーズをはじめとする複数製品のプロジェクトマネージャーを歴任。2014年からForguncyの初期プロジェクトメンバーとして参画し、現在は「Forguncy」のプロジェクトマネージャーに従事。
ノーコードとローコードを橋渡しする「Forguncy」
-はじめにForguncyのコンセプトについて教えてください。
近年注目を集めるようになったノーコードは、ローコードの延長として語られることが多いのですが、実際のところ、生まれた背景や思想が違うため、現場レベルではノーコードとローコードの間には大きなギャップがあると考えています。例えば、非エンジニアの方が拡張性を求めてローコードツールを扱うのは現実的ではありませんし、プロのエンジニアの方にとってはノーコードツールでは要件が満たせないということもあります。
そのため、Forguncyはこのギャップを埋めるために、非エンジニアの運用担当者の方でもアプリを作成することができ、さらに、エンジニアの方の業務効率も改善するエンタープライズ向け製品として展開しています。
-Forguncyの特徴について教えてください。
Forguncyは、Excelのようなセルベースの操作画面と外部データとの連携が可能なAccessのようなデータベース機能を持つノーコードWEBアプリ―ケーション開発ツールです。
プログラミングをすることなく、Excelのようにセルのマス目を方眼紙として利用できるため、セル結合や罫線を使って紙の伝票のようなレイアウトを簡単に再現できる他、書式や条件書式からショートカットキーに至るまで、Excelと同じ感覚で利用して頂けます。そのため。非エンジニアの方でも多彩な機能を持つ業務用アプリケーションを開発することができます。
データベースに関しては、AccessのようにUI操作で手軽に利用して頂けます。Forguncy自体がデータベース機能を内蔵していることに加えて、Oracle databaseやSQL Serverなどの外部データベースとの接続も可能です。また、データベースに直接接続できない基幹システムやパッケージシステムでは、CSVを介して定期的にForguncyにデータを取り込み、データソースとして扱うことも可能です。
それぞれの企業特有の業務課題を解決するForguncy
-具体的な導入事例について教えて頂けますか?
Forguncyはこれまで様々な業界の企業様にご利用して頂いてきましたが、製造業のようにデジタル化が難しいと言われてきた業界でも多くの導入事例があります。
例えば、総合塗料メーカーの大日本塗料株式会社では、大規模な基幹システムの移行に伴い、暫定的に、数千種類ある塗料の設計図やレシピに関するデータをExcel VBAで管理運用していました。数千のExcel で塗料の配合情報を管理しマクロを使って新しい基幹システムにデータを登録するという運用は、膨大かつ煩雑な作業を伴うものであったために、Forguncyを導入して頂きました。
Excel VBAを変更しようとすると、数千ファイルあるすべての仕様書のマクロをその都度、更新する必要がありますが、Forguncyであればロジックの変更は一度で済むため、作業が迅速化できる他、Excelと同じ感覚でアプリケーションを開発できるので、導入後すぐに対応して使えるといった点などを評価して頂いています。
また、低コストかつ短期間で業務をシステム化したいという要望を持つ企業様にもForguncyを採用していただくことも増えています。
例えば、ビルの外壁点検やマンションの補修工事などに使われる仮設ゴンドラのレンタル事業を手掛けるトーヨーカネツビルテック株式会社では、従来、仮設ゴンドラの稼働状況や入出庫情報の管理を手入力のExcel台帳で管理していましたが、仮設ゴンドラは工事の進捗状況や天候によりレンタル期間が延長することも多く、Excel台帳の管理による対応には限界があると課題感を持っていらっしゃいました。
「短期間かつ低コストで、Excelで管理していたゴンドラ台帳をシステム化したい」という要望を持つ同社がForguncyを導入した際に、開発からテストまでに要した期間は1か月。400台を超える仮設ゴンドラの稼働状況をリアルタイムで管理するWebデータベースアプリを開発しました。
(参考:Forguncyの導入事例一覧)
ForguncyはDXをどのようにして推進するのか
-ノーコード開発はDXの文脈からも注目を集めていますが、DXに対する解決策としてもForguncyは有用なのでしょうか?
Forguncyは、今年で6年目となる製品ですが、昨年に比べると問い合わせは、1.5倍ほど増えています。定量評価は難しいですが、ノーコード業界自体の盛り上がりや、DX推進の機運が高まったことも背景にあると感じています。実際に、Forguncyは、エンタープライズ向けのノーコード開発ツールであるため、DXの推進を目標とする企業様に対しても価値を提供する製品として開発を続けてきました。
-ForguncyはどのようにしてDXを加速させるのでしょうか?
DXを推進する上での課題には様々なものがあると思いますが、主な要因として、組織におけるシステムのサイロ化やパッケージ製品では対応できないような部署ごとに特有な業務課題などが挙げられます。
組織内で、複数のシステムが相互に連携できずに孤立してしまうサイロ化の問題を抱えている企業は多いと思いますが、先ほどもお話しましたように、Forguncyでは、SQL ServerやOracle databaseなどの外部のデータベースとの連携が容易なのも特徴です。直接連携する機能の他、外部からの接続が許可されていないデータベースとの連携に関しては、中間ファイルを介して自動でデータを連携できる機能があり、システムのサイロ化を課題とする企業の方々を想定した設計になっています。

また、会計業務と関連する予実管理や、製造業の場合、生産管理業務に紐づく品質管理といった業務がありますが、それぞれ会社独自の要件があり、部署ごとの課題も異なるため、パッケージ製品や基幹システムの拡張では対応が難しい領域であると言われてきました。
Forguncyは、ノーコードでありながら、データ連携機能をはじめ開発の自由度が高い製品ですので、それぞれ固有の課題を持つ部署ごとに既存の基幹システムに紐づいた業務改善ツールを作ることが出来ます。
アジャイル開発を加速させるノーコード
-ノーコード開発ツールはアジャイル開発と相性が良いと言われていますが、Forguncyでもそのような使われ方はされていますか?
一般的にシステム開発においては、現場の運用担当者がすこし修正したい箇所があると思っても、常設のエンジニアの方の手が回らなくて、すぐに対応できないといったことはよく起こることだと思います。
Forguncyは、非エンジニアの方でもすぐに稼働するモックをササっと作れるので、マーケットの変化や業務の変更に迅速に対応できるようになり、運用担当者の満足度が上がったという声やエンジニアの方の負担が減ったという声を頂いています。
長年の開発経験が生かされたエンタープライズ向けのノーコード開発ツール「Forguncy」
-エンタープライズ向けノーコード開発ツールは、まだまだ普及しはじめたばかりだと思います。最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願い致します。
ノーコード開発は、コンシューマ向けのアプリケーション開発ツールとしては話題になるようになりましたが、まだまだ、エンタープライズの実用には向かないのではないかといった印象を持たれている方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、これまでお話しましたように、エンタープライズ向けのノーコード開発ツールは、業務効率化やDXの側面からも様々な導入のメリットがあるものだと考えています。
弊社は元々、数十年に渡り、エンジニアの方向けにVisual Studio上で利用できるコンポーネントの開発をしてきたため、特に日本の業務システムに求められるExcelライクなUIや帳票機能、そして業務改善ツールの開発経験を資産として蓄積してきました。
Forguncyは、それらの資産と経験をもとに作られたものであり、誰しもが簡単にノーコードでもエンタープライズレベルのシステムを開発できる製品です。今後も、Forguncyを通じて、様々な企業の方々の業務効率化、およびDX推進に貢献していきますので、DXに遅れていた業界の方やノーコード開発ツールの導入に敷居を感じている方にも興味を持っていただけますと幸いです。