多くの企業で業務効率化を目的とするSaaSの導入が進み、業務単位での最適化や自動化が推進されましたが、「必要な情報がどのSaaSにあるのか分からない」「1日に何度もSaaSを切り替えるのに疲弊している」といった課題を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そのような背景から、複数のSaaSを連結・統合するiPaaS(integrated Software as a Service)やHorizontal SaaSといった概念が注目を集めるようになりました。
それに伴い、ノーコードのiPaaSも数多く生まれており、非エンジニアでも気軽に日々の業務を効率化・自動化できることから、今後もその発展が期待されます。
今回は、iPssSの中でも代表的なノーコードツールである「Zapier」の使い方について紹介します。プログラミングを経験したことのない方に向けて、Gmailに送られたメールの内容を自動でスプレッドシートに保管するアプリを作成していきながら、Zapierのメインとなる機能について概観していきたいと思います。
1.ノーコード業務自動化ツールZapierとは?
Zapierとは?
まずは、Zapierの基本的な機能について紹介します。
Zapierは、2012年にアメリカで生まれた手軽に複数のサービスを連携させ、タスクを自動化してくれるサービスです。2つのサービスを連携した事例として以下のようなものがあります。
- Twitterのツイート内容をスプレッドシートに保存する
- Gmailにて送られたメールの内容をSlackに表示させ通知も行う
- Googleフォームにて新しい回答があれば、ChatWorkに通知する
2012年では、連携できるサービスは25種類ほどでしたが、2021年8月現在では3000種類を超えるまでに拡大しており、自動化サービスとしては世界No.1のシェア率を誇っています。私たちが身近に使っているツールの多くは連携可能だと言えるでしょう。
また、ノーコードアプリ開発ツールであるBubbleやClick、ノーコードWeb制作ツールであるWebflowやSTUDIOとも連携することが可能であるため、ノーコードの機能をさらに向上させることも可能です。
また、Zapierは業務自動化ツールであるため、プログラミングやデータベースの知識がなくても、比較的簡単に使用することができます。
Zapierで連携できる有名なツール
有名なものでは以下のようなツールを連携することが出来ます。
SNSアプリ
- YouTube
メールアプリ
- Gmail
- Microsoft Outlook
- MicroSoft Office 365
チャットツール
- Slack
- Discord
- ChatWork
- Google Hangouts Chat
ファイル管理ツール
- Googleドライブ
- OneDrive
- Dropbox
タスク管理アプリ
- Trello
- Asana
その他便利な業務アプリ
- ZOOM
- Google Spredsheet
- Google Forms
- Google Calendar
- Calendly
- Airtable
その他にも、多くのツールと連携できるため、気になった方は以下の公式サイトをチェックしてみると良いでしょう。
Zapierでよく連携が行われている事例
Gmail×Googleドライブ(Dropbox)
Zapierを使ってこれらのツールの連携を行うと、Gmailより受け取ったメールの添付ファイルをそのままGoogleドライブ(Dropbox)に保存することができます。
この動作によって書類の整理ができるため、Gmailの内容を保存する際の手間を省くことが出来ます。
Slack×Asana(Trello)
Slackは、複数人の方と仕事をする際のコミュニケーションツールとして使用されることが多いですが、これをZapier連携で業務管理ツールであるAsanaやTrelloと連携することによって、より業務の指示効率を向上させることができます。
特定のチャンネルで送ったタスクがそのままAsanaやTrelloに追加することができますので、非常に便利な連携です。
Twitter×Google Spredsheet
Twitterで投稿した内容などをGoogle Spredsheetに保存することもできます。自分が過去にどのようにツイートしたのか、「いいね数」はどれだけあったかなどのリサーチ目的にも応用することができます。
何かしらの書類の内容をGoogle Spredsheetに保存するといった使い方は、Zapier連携で最も使われている事例の1つになります。
Zapierの料金プラン
Zapierは無料プランあってもアプリを作成することが可能ですが、一部の機能に制限があるため使い方によっては有料プランへの登録が必要になります。
それぞれのプランは下記のとおりです。
プラン | 月額料金 ※1 | タスク数※2 | パターン数(Zap)※3 | 備考 |
Free | 無料 | 50 | 5 | 無料で始められる初心者向け |
Starter | $19.99 (約2300円) |
750 | 20 | 無料プランで満足できない人向け |
Professional | $49 (約5500円) |
2000 | 無制限 | 個人で使う人向けの最上位プラン |
Team | $299 (約33500円) |
50000 | 無制限 | チームでZapを共有する場合に使用 |
Company | $599 (約67500円) |
100000 | 無制限 | 法人でしっかり扱いたい人向け |
※1 2021年8月時点の為替レートにより日本円を算出しています。現在の日本円を知りたいという方は以下のURLにて調べることができます。
【公式】Zapierのプランにかかる料金(日本円)
※2 Zapierではアプリ間のActionの回数のことをTaskと言います。Gmail×Googleドライブ(Dropbox)の連携を行う場合のActionは「添付ファイルをGoogleドライブ(Dropbox)に保存する」になるため、1回の実行で1回分のTaskを消費することになります。それゆえ、1回の実行で3つのActionが存在する場合は3回分のTaskを消費することになります。
※3 Zapierでは「アプリ連携を行なったワークフローの数」をZapと言います。Gmail×Googleドライブ(Dropbox)の連携を行う場合は「Gmailより受け取ったメールの添付ファイルをGoogleドライブ(Dropbox)に保存する」という一連の流れが1つのZapになります。つまり、無料プランであればアプリ連携の1連の流れを5つまでこなすことができます。
2.Zapierを使うための準備をしよう
Zapierは、基本的な機能を触るだけであれば無料で利用することができますが、会員登録が必要になります。
まずは、公式サイトへ移動し、右上のSIGN UPをクリックしてアカウントを作成していきましょう。GoogleアカウントやFacebookアカウントと連携させたいという方は「Sign up with Google」または「Sign up with Facebook」を用いてアカウントを作成しましょう。
そこでメールアドレスなどの必要事項を記入し、パスワードを設定すればアカウントの作成が完了します。
その後にZapierから質問がいくつかなされますが「Skip」を押して飛ばしてもらえば大丈夫です。
また、この状態ではZapierからのメールが受信されるようになっているため、Zapierからのメールは必要ないという方は左下にある「Receive marketing emails from Zapier」のチェックは外しておいてください。
これでZapierを使うための事前準備は完了です。
3.Zapierを使って実際にアプリ間の連携を行う
Zapierへの登録が完了したところで、早速アプリ間の連携を行っていきましょう。
ホーム画面
認証が完了し、Glideを利用可能になると、ホーム画面が表示されます。
新しくZapier連携を始める場合には左上にある「Create Zap」を選択します。本記事では、最も多く使われているであろうGmail×Google Spredsheetの連携を行なっていきます。
つまり「Gmailより受け取ったメールをGoogle Spredsheetに保存する」という一連の流れのZapをここで作っていきます。
Zapier連携のトリガーの設定を行う
「Create Zap」をクリックすると、以下のような画面に移動します。
そこで、左上の「Name your zap」をクリックしてこのZapの名前を付けましょう。本記事では分かりやすくするために「Gmail×Google Spredsheetの連携」という名前にしておきます。
次に、このZapのトリガー(起点となるアプリ)を検索していきます。今回は、Gmailより受け取ったメールアドレスを起点にしているため、Gmailがトリガーになります。
「Search apps…」に「Gmail」と入力して「Gmail」を選択します。
そして「Choose an event」から「New Email」を選択します。
この選択によって「新しいEメールを受け取る」というイベントをトリガーに設定することができました。
そして「Continue」と書いてある青色のボタンをクリックします。
すると以下のような画面に移ります。Gmailを使って連携を行う場合、どのGmailアカウントと連携するのかということを決めなければならないため「Sign in to Gmail」をクリックして、連携する自分のGmailアカウントを選択します。
そして、GmailアカウントをZapierと連携させることを許可しましょう。すると、以下のように画面が切り替わりGmailアカウントとの連携が完了します。
次に「Continue」をクリックすると「Set up trigger」という表示が出てきます。ここでは、Gmailの中でも「どのようなメールをトリガーとするのか」という設定を行なっていきます。
今回は、Gmailが受け取ったメールの全てをトリガーとしたいので、受け取った全てのメールを表す「INBOX」を選択します。そして「Continue」をクリックします。
すると、以下のような画面に切り替わるので「Test trigger」をクリックしてテストを行います。
そして下にスクロールして「Continue」をクリックします。
そして、以下の表示に切り替わればテストは成功です。
Zapier連携のActionの設定を行う
次はトリガーを使って実際に動作を起こすための設定を行います。
トリガー設定のときと同様に「Search apps…」に「Google」と入力して「Google Sheets」を選択します。
ZapierによってGoogle Spredsheetとの連携を行うには、事前にシートを作っておく必要があります。なのでGoogle Spredsheetに移動し「空白」を選んでシートを作成していきます。
そして、シートの1番上に
- メールアドレス
- 名前
- 件名
- 本文
- 日付
と入力しておきます。
そしてこのシートの名前は、本記事では「Zapier×Google Spredsheet」としておきます。これで、Google Spredsheetの設定は完了です。
次にZapierに戻り、Action Eventの設定を行なっていきます。入力欄から「Create Spreadsheet Row」を選択します。この設定によって、Gmailの内容に応じて新たな行をGoogle Spredsheetに作成することができるようになります。
そして「Continue」をクリックして、Gmailと同様に「Sign in to Google Sheets」にZapierとのアカウントの連携を行います。許可まで行うと、以下のような画面に移動します。
そして「Continue」をクリックして次に進むと「Drive」「Spreadsheet」「Worksheet」の3つの設定項目がでてくるので、それぞれ以下のように入力します。
- Drive:「My Google Drive」を選択。
- Spreadsheet:先程作成したシートを選択。本記事では「Zapier×Google Spredsheet」を選択。
- Worksheet:1つのシートしか作っていないので「シート1」を選択。
これらの設定を行うと、Spreadsheetの列の名前の項目が表示されるので、それぞれ以下のように入力します。
- メールアドレス:From Email
- 名前:From Name
- 件名:Subject
- 本文:Body Plain
- 日付:Date
補足ですが、これらの項目の横についている文字(From Emailであればno-reply@accounts.google.com)はただの具体例になります。これをみることによってどの項目を選べば良いかを分かりやすくしてくれているということです。
そして「Continue」をクリックし、「Test & Continue」をクリックします。成功していると、作成したシートに新たな行が作成されています。
最後に「Turn on Zap」または右上にあるスイッチを「ON」にすると、全ての設定が完了し本運用を行うことが可能になります。
4.おわりに
本記事では、Zapierの機能を活かしてGmail×Google Spredsheetの連携を行い、業務を自動化する手順について説明を行いました。
Zapierは3000種類以上のアプリと連携することができるため、多種多様な業務の自動化を実現することができます。日々の業務もZapierによって時間短縮ができるので、ぜひ検討してみてください。
今後も各ノーコード開発ツールの使い方を分かりやすく紹介していきたいと思います。
また、ノーコードジャパンでは、ノーコード開発者たちが気軽に質問し合える無料のプラットフォームNoCode Forumを運営しております。ノーコード開発で分からないことがあったら一人で悩まず、気軽に質問してみましょう。